Story of 3hummock

(一部ライナーノーツより引用)

パブロ・フアレスの音楽は日本では『Sumergido』(2011年アルゼンチン盤)がインポーター大洋レコードを通じて紹介され、『bar buenosaires - Viento, Luz, Agua』『Quiet Corner - a collection of sensitive music』のコンピレーション・アルバムに収録の後、繊細で美しい音楽を好むリスナーに彼の音楽が伝わりました。

その頃2012年に、私がアルゼンチンへ旅したという偶然も重なり、ギタリスト/作曲家 ギジェルモ・リソットがロサリオ同郷の音楽家仲間であるパブロ・フアレスと会わせてくました。その時、パブロさんにいただいたCDのメッセージに胸が熱くなり、何か形に残すことができればと漠然と考えていたものの、2014年に尊敬するふたりの音楽家、藤本一馬さんと伊藤志宏さんのアルバム『Wavenir』を制作するご縁でhummock labelを始めることになり、以来、日本からパブロさんの音楽活動を見つめながら、ピアノだけのアルバム制作について尋ねたことがありました。すると「そのためのリトラル(沿岸)地方の作曲を取り組みたい」と返事をいただき、私は2017年の冬、5年ぶりに再びロサリオを訪れ、彼が主催するソロピアノ・コンサートのために数日間ともに過ごすことになりました。

ロサリオに訪れたもう一つの目的は写真家ガブリエラ・ムッシオに会うこと。ガブリエラさんはギジェルモ・リソットの『Solo Guitarra』のジャケットモノクロ写真を撮影した女性フォトグラファーで、いつかお会いする機会が持てたらと願っていました。ソロピアノ・コンサートの前夜、ガブリエラさん宅にてパブロさんと会うことになりました。パブロさんと僕は5年ぶりの再会。ガブリエラさんとパブロさんは初対面、みんなのお互いの共通はギジェルモ・リソットと友人であること。僕が持参した日本食を調理しつつ、不思議なご縁に乾杯した思い出深い夜。

翌日に控えたパブロさんのピアノソロ・コンサートの話になりました。数日前にその会場で演奏しようとしたピアニストが椅子の高さを変えようとすると壊れてしまい、その椅子は使用できず困っている様子でした。ガブリエラさんが静かに興奮した様子で「ピアノはないけどちょうどピアノ用の椅子は持っているわ」と、奥から持ってきたとても年季の入ったその木製の椅子は使われることを待ち望んでいたかのように輝いて見えました。コンサートは無事に終了し、その椅子は、実はギジェルモ・リソットの『Solo Guitarra』に使われていた椅子だと後で知り、そっと最新作のアルバム・ジャケット裏に載っています。(ジャケット表には、ガブリエラさん撮影のパラナ川を滑空する"Saladillo"と呼ばれる一羽のツバメの写真を選びました)

ロサリオを離れる日、パブロさんは散歩が好きでよく水辺を歩いているらしく、パラナ川沿いを散策しながら野鳥や魚、自然こと、音楽活動について話しました。約10年間ブエノスアイレスで音楽活動をしていたパブロさんは、昨年地元ロサリオに戻ってきました。私がその時体験したソロピアノ・コンサートでの新曲はタイトルも自然を思い起こすもので、緩やかな心境の変化を感じ、今回発売した新作の原石になる音楽だったように思います。

ロサリオを愛し、自然を愛し、家族を愛するピアニスト作曲家パブロ・フアレス。美しいもの、感動を覚えるもの、心やわらぐ余韻など自由に感じていただくことが、いまのパブロにとってなによりの幸せなことなのかもしれないと感じました。彼の音楽もまた日本で広がることを願います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。





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